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「ちょっと待って」はタブーか ≪施設長 樋口≫

介護の業界ではスピーチロックと言われ、「言葉による抑制」と広くとらえられている「ちょっと待って」。(病院でも言われたりするかな)
この「ちょっと待って」はネットで検索すると色んな方が考察していたり、質問サイトでは「言っていいのか悪いのか」と度々質問されている。中には「ちょっと」の部分を「時間」に置き換え、「1分で来るので待っててください」と必ず来ることを約束すればよいとする回答もある。これには私も「なるほど」と思う。「ちょっと」は介護者側都合の時間軸を押し付けているので一体どれほど待てばよいかわからない。数秒か、数分か、不安を助長するかも知れない。待ち時間を伝え、約束すれば安心につながる事は間違いない。
するとどういう訳か「じゃあ待ち時間を伝え、あとで来ることを言えばいいのか」と文面通りにしか受け取れない者がでてきたり、施設ごとに設置している身体拘束廃止委員会などでは「ちょっと待って」を他の言葉に置き換え「どんな言葉なら使ってよいのか」という議論になったりする。
そうなんだけど、そうじゃない。
問題は「ちょっと待って」のシーンにコミュニケーションが存在しない事だ。忙しいのはわかるが、こちらの要求のみを「チョットマッテ」という単語にしてぶん投げるから「拘束だ」「スピーチロックだ」と言われるのだ。故にその言葉をタブー視して「1プンデクルカラマッテテ」にしても意味はない。次はその言葉がまたタブーになるだけだ。
認知症高齢者が何かを訴えた時や目的があって動き出した時、必ずそばに行き、コミュニケーションをとり、訴えを聞くのだ。仮にすぐに行けなくても用事が終わったら必ずその人のところに行き、そばでコミュニケーションをとる。「ちゃんとあなたの事を見ているよ」と理解してもらうのだ。結局待ってもらうのは変わらないのだがその中ででた「ちょっと待って」は決して拘束なんかじゃない。
肝心なのは必ずそばに行きコミュニケーションをとる事。そして人の信頼を得たければ近づかなければいけない。離れていては絶対にダメだ。
「ちょっと待って問題」は言葉がタブーとかそういうレベルの問題ではないだ。