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「私は家政婦じゃない」??? ≪施設長 樋口≫

私の家の近所に独り暮らしのお年寄りがいる。(お年寄りなんて言ったら怒られるかもしれないが)
その人は十数年前に引っ越してきた私たち家族の面倒をみてくれて、近所の輪に入りやすいよう配慮してくれたり、自治会の活動でわからないことを教えてくれたりと、子供達にも良くしてくれた。
非常に元気な方だったが、やはり加齢には逆らえないのだろう。近年配食サービスや訪問介護のヘルパーを利用し始めていた。私の家族も「最近あの人元気ないね」と気にはなっていたが、先日妻がその方と家の近くで話しをする機会があり、その内容を教えてくれた。
「家の掃除に訪問介護のヘルパーさんが来ているんだけど、認知症予防の為と自分で床の雑巾がけをするように言われて、疲れて休むと『こっちは家政婦じゃないんだよ』と怒られる」という内容だった。

なぜだろう。福祉や医療の業界には一定数いまだに横柄な態度をとる人がいる。医療も福祉も本来「世話になりたくない」ものだ。しかしながら病気や加齢によってやむなく世話になる事がある。なのになぜ「やってあげている」「世話してあげている」という態度になるのか。そして認知症予防に雑巾がけってどんな根拠があって言っているのか。
私も介護の現場にいたが時々聞いた「私たちは家政婦ではない」という言葉。無意識に家政婦という職業を見下しており、しかもそういう人ほど家政婦という職業との違いを語る事ができない。もっと言えば『私は家政婦じゃない』、こんなことを根拠もなく『きっと自分達の方が大変な仕事をしているから』程度の理由で言っている介護職は介護職でもない。
医療の仕事も介護の仕事も非常に激務なのは事実だ。様々な疾病への対応、緊急時の対応、認知症の方への対応、挙げればキリがない。しかし私たちがプロとしてこの仕事をしている以上、「大変さ」が横柄な態度の免罪符になる事はあり得ないのだ。