エイプリルフール ≪施設長 樋口≫
去る4月1日は1年に一度嘘をついても許される日、エイプリルフールでした。最近はSNSなんかでいろんな企業や芸能人が面白い「嘘」をつき、それが誰かの逆鱗に触れ炎上して謝罪に追い込まれるなんてニュースも風物詩になってきました。もううかうかエイプリルフールに嘘なんかつけません。ネット警察の餌食です。
さて、介護業界で働く方は認知症の方に「嘘」をつくことが多いのではないでしょうか。
まぁ中には「認知症の方に嘘をついてはいけない」という人もいるんですが、皆さんはどう思いますか?
認知症の人には「その人の世界」があって、その世界で生きています。「その人の世界」と「私たちの世界」にはどうしてもギャップがあります。「小学生の息子」が実は60歳を超えるおじさんだったり、「歩いて帰れるよ」と言ってるその家が何十㎞も離れていたり。
認知症介護のプロである私たちは「その人の世界」を壊すことはしません。「その人の世界」に入るのです。そして、「その人の世界」と「私たちの世界」のギャップを埋めることができるのが介護職がつく「嘘」だと思っています。
「家に帰らないといけない」と出口を探す認知症高齢者に「一緒に出口をさがしましょう」と散々一緒に探し回って「ここは開かない」「ここは出口じゃない」と、困り果てたところで介護職の人が嘘をつくんです。
「私、明日バスで帰るんですけど一緒に帰りませんか?」
「いいの?一緒に来てくれる?でもお金ないよ?」
「大丈夫ですよ、一人分くらい出しますよ」
「ほんと?悪いねぇ、よかったよお。今日は泊めてくれる?」
こんな会話介護の人なら誰もがしたことはあるでしょう。認知症対応がうまい人は時間稼ぎがうまい人って誰かが言ってました。
認知症の人の「その人の世界」と「私たちの世界」にあるギャップを埋めるには「嘘」しかありません。
エイプリルフール、1年に一日だけ嘘をついていい日。その嘘で笑ってくれる人もいれば怒る人もいます。介護職は毎日がエイプリルフールで、その「嘘」で認知症高齢者に「安心」を届けているのです。