クリスマス ≪施設長 樋口≫
12月になると、子供をもつお父さんお母さんたちは
「そんなんじゃサンタさん来てくれないよ」
という、一撃で子供に言うことを聞かせる強力な武器を手に入れます。この「シーズナルウェポン」は12月24日までしか使えませんが、12月25日以降は
「そんなんじゃお年玉あげないよ」
という新たな武器に変わります。ただ、この武器も元旦までの限定です。
そしてお正月が来ると、子供たちは「親戚の叔父叔母」「祖父母」という強力な味方を手に入れます。この人たちは子供の日頃の行いを知らないので、無条件でお年玉を渡してきます。しかも正月の間だけは、子供たちはこの人たちに異常に懐きます。お父さんお母さん、年末年始のこの攻防戦、頑張ってください!
さて、10月の「ハロウィン」という高齢者になじみが全くない介護施設泣かせのイベントが終わり、次はクリスマスです。子供や恋人たちのイベントと思われがちなクリスマスですが、実は日本では明治時代からプレゼントを贈るイベントとして広がり始めており、昭和生まれの高齢者にもおなじみの行事となっています。
クリスマスに欠かせないクリスマスケーキも、日本では不二家が販売を始めたのをきっかけに、戦後の経済成長とともに普及しました。冷蔵庫の普及も相まって、今やイチゴを乗せた白いクリスマスケーキが代表的なクリスマスケーキとして一般家庭でも親しまれています。
話は少し変わりますが、高齢者も子供も楽しめるクリスマス、この時期になると高齢者にサンタクロースやトナカイのコスプレをさせた写真をSNSにアップする施設が見受けられます。
いや、いいんですよ、高齢者の方が
「サンタの役は俺しかいねぇだろ」
と自ら立候補してくれてるなら。
まぁSNS映えする楽しい写真を撮りたい気持ちはわかりますが、自分が歳を取ってからコスプレして世界中に見られる勇気がある人って、そう多くはないと思うんですよね。自分の親がトナカイの角や帽子を付けさせられている姿を見て「楽しそうで良かった」と思う人は少ないと思いますし。
100歩譲って、ご家族から「昔はクリスマスになるとサンタの格好をして、子供たちを喜ばせていたんですよ」という情報があれば別ですが。
職員の人たちは、入居されている高齢者からすれば子や孫くらいの年齢の方がほとんどです。子や孫と高齢者の関係性を考えれば、本来は入居者の方々が職員に「プレゼントを渡したい」くらいの年齢差ですよね。
時々、お菓子を職員に渡したがる入居者はいませんか?お客さんと店員という関係ではなく、そこには昔の「大人と子供」という家庭や地域での暖かい関係性を感じる事ができると思います。
今は認知症や病気を患っている入居者も、昔はあれこれ悩みプレゼントを用意して、子供が寝ているのを確認してからプレゼントをそっと置いたり、「お年玉をいくらにするか」を夫婦で相談したりしていたんですよね。
この年末年始のイベント、介護の仕事に従事する人たちは、安易にSNSや写真の為にコスプレさせるのではなく、昔の姿を想像しながら入居者の方々の思い出や歩んできた人生を考える機会にもしたいですね。