介護の職場 ≪施設長 樋口≫
介護の仕事は介護を必要としている人の人生を支える仕事だ。
病院に勤め、介護職駆け出しのころの私は、
いかに早くオムツ交換を終わらせるか、
いかに早くたくさんの人を入浴させるか、
いかに早く食事介助を終わらせるかを徹底的に叩き込まれた。
どの業務も早く終わらせると褒められた。
先輩たちもその速さを競い、自慢げに話していた。
その病院の中では早さがすべて。
あれから十数年経った今も、そういう施設は多いと聞く。
特養に限らず、有料老人ホームもだ。
今私は職員に早さを求めることはしない。
前施設でも早さを求めたことはない。
そもそも高齢者は遅いのだ。(怒られるかも)
早さを求めるベテラン職員に
「100mを12秒台で走れ」といっても
「無理に決まってんでしょ!」と言われるだろう。
つまりそういうことだ。
身体の何らかの機能が衰え、施設での生活を余儀なくされた高齢者に
早さを求めるのが間違いってもの。
長い長い人生駆け抜けてきた人たちなんだから
終盤くらいゆっくり歩かせてあげようよ。
利用しているお年寄りも生きている、
働いている職員も生きている。
ともにゆっくり歩けるような職場を作っていきたい。