介護は山脈型へ ≪施設長 樋口≫
介護職員のキャリアアップって、どんな感じで想像しますか?介護業界で働いていない方には、なかなかイメージが湧かないかもしれません。20年以上前、介護職のキャリアアップと言えば、ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格取得が一般的だと思われていました。これは単純に、介護支援専門員の資格取得要件がそのようになっていたからです。その頃、介護のキャリアは「まんじゅう型」とも言われていました。
≪厚生労働省HPより引用≫
厚生労働省のHPでも、このような図で表現されています。左側の図にあるように、昔の介護業界には特に専門性がなく、業界自体もキャリアアップの道筋を示していませんでした。そのため、男性が結婚を機に退職する「男性の寿退社」などが問題になっていました。(今でも業界内には、出世したくない、学びたくない、利用者が変わってもやり方は変えたくない、という介護職員が多いように感じますが。)その後、右側の「富士山型モデル」が提唱されるようになりました。このモデルは、裾野を広げ(つまり、働く人を増やし)、キャリアを上に伸ばすことで、専門性の高い介護職の創出を目指すものです。2015年にできた認定介護福祉士という、介護福祉士の上位資格がその一例です。
ただ、私はこの「富士山型モデル」もイマイチピンと来ていなくて…というのも、介護の仕事って、高齢者の人生を支えるという、非常に重要で人間味のある仕事だからです。だって、人生って食事や排せつ、入浴だけじゃないでしょ?
介護福祉士以外にも、介護系の資格は星の数ほどあります。例えば、認知症の分野では、認知症介護実践者、認知症介護指導者、認知症ケア専門士などがあります。さらに、在宅介護の分野では、福祉住環境コーディネーターや福祉用具専門相談員などが有名です。珍しいところでは、レクリエーション介護士や介護食士などもあります。
少し読んだだけでも「現場で毎日オムツ交換や入浴介助で終わるだけが介護じゃないんだ」と、ワクワクしてきませんか?この介護の仕事、実は色んな道があって、非常にワクワクする業界なんです。でも、現場で長年働いてきた古い人たちや、ちょっと介護をかじっただけの人たちが、「介護ってこんなもんだよ」と自己流で移乗介助、食事介助、入浴介助、排泄介助を行い、「こんなもんだろう」と決めつけてしまうのも、介護業界の現実です。
そんな中、最近やっと厚労省が新しいモデルを提案しました。
≪厚生労働省HPより引用≫
「富士山型」で1つだった山頂が複数の山頂を持つ「山脈型」に進化しました。例えば、富士山型では、上に行けば行くほど道が険しく、キャリアアップの道はほぼその1本しかないように見えました。しかし実際には、そんなことはなく、現場で認知症介護を極める人もいれば、独立して自営業を始めたり、経営側に回ったりする人もいます。職場で出世の道がなくても、施設の外に出て講師として活動している人もいます。途中で登る道を変えたり、同時に2つの山頂を目指すことだって可能です。もちろん、上を目指さずに裾野にとどまっても全く問題ありません。介護の仕事には、実は様々な道があります。
この樋口も、施設では管理者ですが、外に出れば講師として活動したり、技能実習生の試験官を務めたり、行政の委員もやったりしています。20年前、介護業界で働いても先が見えなかった時代とは違い、今はキャリアの幅が広がっています。皆さんの施設ではキャリアの頭打ちを感じても、「出世できない」と諦める必要は全くありません。
何回も言いますが、この業界は道がたくさんあります。山もたくさんあります。あなたも施設を出れば「先生」と呼ばれるようになります。全部自分しだいです。
どうせ働くんだったら、ワクワクする方へ。