介護職のキャリアアップ ≪施設長 樋口≫
とある研究機関の調査で、介護職の離職理由を調べていた。
1600人の有効回答の調査だったので実情を反映しているものと思うが、
離職理由の第2位が「キャリアアップの見通しのなさ」だったことについて今回は書きたい。
(ちなみに1位は貫禄の「賃金の低さ」だった)
「介護職はキャリアアップが容易にできるよ」というつもりはない。
この調査に協力した「介護職を辞めた人達」が、
どういう意味でキャリアアップの道という言葉を受け取ったかわからないが
どこもキャリアアップというのは簡単なことではない。
私も営業のサラリーマンとして働いた経験があるが、
大きな会社ではなく社長が一代で築いた会社だった。
あのまま勤めて十数年後か役職はついても自分が社長になる事はなかっただろう。
そういった中小企業でのキャリアアップは行きつくところは独立しかない。
これはどの産業でも同じことが言える。
有名な美容室に勤めても、有名な飲食店に勤めても、
キャリアアップには独立が不可欠になる。
介護業界はどうかと言われれば、もちろん「同じ」としか言いようがない。
介護業界で「キャリアアップの見通しのなさ」を離職理由に挙げる人は
この業界で食っていこうと、福祉の世界で生きていこうという覚悟がなかった人かも知れない。
それを裏付けるように先にあげた調査では離職した人のうち、
1年以内に辞めた人は約30%
3年以内に辞めた人は約60%だという。
(どの業界でも1年~3年未満じゃキャリアアップは普通しないだろう…)
辞める理由を「キャリアップの見通し」のせいにする人は
古い昭和の年功序列、終身雇用への憧れが心のどこかにあるか、
キャリアアップの見通しを教えてくれない先輩や上司にうんざりした人なんだろうな。
と、愚痴っぽくなったところで良いニュースもある。
「賃金の低さ」と「キャリアアップ」両方を解決するべく、
政府は「勤続10年のベテラン介護福祉士に月額8万円アップ」を決めようとしている。
かなり大きな金額だが、疑問や不安もある。
現在でも加算などで改善されつつある介護職員の賃金に上乗せした場合、
福祉の中核職とも言えるケアマネジャーの賃金を超えることになる。
中には医療専門職の看護師の賃金を超える者もでる。
すでに各団体が反応している通り、
高齢者福祉業界は介護職だけで成り立っているわけではない。
正直そんなに増えるなら私だって介護職に戻りたいと思う(笑)
今後詳細が決まり、なるべく多くの福祉職の処遇が改善出来ることを願う。
と、同時に介護職の方々は賃金だけ上がり「私たちは今まで通り」というわけにはいかない。
税金が投入され、国が賃金を上げてくれるのだから、国が求める介護福祉士にならなければならない。
もう介護は昔とは違うのだ。