実行再生産数 ≪施設長 樋口≫
表題の言葉を聞いたことがある方はいるだろうか。
“感染症が流行している集団において、ある時点で、一人の感染者から二次感染する人数の平均値。再生産数が1を上回ると、一人の感染者が複数の人に感染させるため、流行は拡大し、1を下回ると、感染者数が減少し、流行は起きないか、収束に向かうと考えられる。”(大辞泉:小学館より出典)
こんな大事な数字なのにニュースでは聞くことはあまりない。
東洋経済オンライン 新型コロナウイルス 国内感染の状況
東洋経済オンラインの情報を引用すると、1月9日時点で日本の実行再生産数は5.9。この時がピークで1人の感染者が6人近くに感染させてしまう状態だったが、1月23日時点では1.93まで下降している。まだ1人が約2人に感染させてしまう状態なので今後も引き続き感染者は増えるはずだ。だが同時に、感染者が「先週の10倍」のような爆発的に増える可能性が低いとも言える。ピークアウトがほんの少し見えてきているのだ。実際、全国よりも早く第6波を迎えた沖縄の実行再生産数は1月9日の10.36をピークに1月23日時点で0.89まで下降し、日ごとの感染者数も減ってきている。先週より増えた、過去最多、と感染者数だけの報道を見続けているといつまでも終わらない、いつまで増え続けるのか、と思ってしまうが実際はそうではないのだ。実行再生産数をみれば「今後まだ増え続ける」だけのニュースが「今後1~2週間をピークに感染者数は減っていく」と読み替えることができるのではないだろうか。そういう意味では今がまさに正念場だ。
私の記憶で恐縮だがオミクロン株がなかった私の学生時代もこの時期は風邪やインフルエンザで学級閉鎖はあった。みんな熱を出していた。今は無症状でも陽性者が数人いれば休校だ。昔は熱なんかちょっと出ると「学校を休める」と喜んだものだが、今発熱し見る景色はその時とは大きく違うものだ。
ウイルスと戦っていた私たちはいつの間にか、違う何かと戦っている気持ちになっている。それは毎日無責任に垂れ流される不安か、それともまん延防止等重点措置などの宣言なのか、感染者を自主捜査する探偵のような世間なのか。
いったい何と戦っているんだか。