1月生まれが多いような… ≪施設長 樋口≫

高齢者施設にお勤めの方はなんとなくわかると思うのですが、
1月生まれの高齢者って多くないですか?
昔、お客さんの高齢者の方から「年末に生まれた人は1月の誕生日にしてたんだよ」「その方がめでたいから」と聞いたことがあり、その時はまあ昔は縁起とか今より気にしてたろうし、今より手続きも厳格じゃなかったんだなぁ、くらいにしか思ってなかったのですが、やっぱり心花春でも1月生まれの高齢者の方多いんですよ。
ちょっと調べてみると、統計としても残っていて、例えば政府統計の総合窓口によると1947年12月生まれの人は186,961人に対して1月生まれの人は295,465人とかなり差が出ています。どうやらこれには昔の日本の「歳の数え方」が関係しているようです。
昔の日本では、生まれた時点ですでに1歳とし、元旦を迎えるごとに年齢が1つ増える「数え年」という考え方が一般的でした。極端な例を挙げると、12月31日に生まれた赤ちゃんは生まれたその日が1歳で、翌日の1月1日にはいきなり2歳になります。お食い初めも終わってない2歳児です。
この数え年の考え方が当たり前だった時代、12月末に子どもが生まれると、数日で年齢が2つ進んでしまうことや、それが婚姻に響くこと、七五三や厄年といった節目の行事の年齢が周囲とずれてしまうことを気にする人も少なくありませんでした。そのため、年が明けてから出生届を出し、1月生まれとして届けるというケースが慣習として実際にあったようです。法律的にはグレーだった可能性もありますが、当時の生活感覚としては、それほど不自然な行為ではなかったようです。
こうした数え年の感覚は、実は今でも私たちの生活の中に残っています。初詣などで見かける厄年の案内板を見て、「自分はいつ厄年?」「どこ見たらいいの?」と思ったことがある人いませんか。このちょっとした混乱の正体は、普段は満年齢で生活している私たちと、今も数え年を基準にして示される厄年とのズレにあります。
現在当たり前になっている、生まれた時は0歳で誕生日ごとに1歳年を取る満年齢の考え方が本格的に広まったのは戦後になってからで、制度として義務化されたのは昭和24年のことです。それ以前は、数え年と満年齢が混在していました。インターネットもなく、情報が今ほど行き渡らない時代ですから、感覚的に数え年のまま年齢を捉えていた人が多かったとしても不思議ではありません。
なお、数え年から満年齢に切り替わった理由のひとつには、「戦後の暗い時期に、年齢が若返ることで少しでも前向きな気持ちになってもらおう」という考えがあったとされています。今ならいろいろ言われそうですが、当時ならではの発想ですね。
その結果、12月に生まれていても戸籍上は1月生まれになっている人が一定数存在し、現在の高齢者世代には1月生まれが多くなったと考えられます。1月生まれが多いことも、厄年に違和感を覚えることも、どちらも昔の数え年の名残なのです。
とはいえ、1月生まれの方が全員12月に生まれているわけではないので、そこは勘違いしてはいけません。
ただ、誕生日ひとつ取っても、時代背景や昔の日本が垣間見えるのは、ちょっと面白いですね。


